全日本ラリー新城:コバライネンが首位を譲ることなくJN-1初優勝 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリー新城:コバライネンが首位を譲ることなくJN-1初優勝

©Jun Uruno / JN-1クラス優勝のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5)

全日本ラリー選手権第1戦新城ラリーは3月20日(日)の競技最終日を終えて、シュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣がJN1クラスで初優勝を達成した。2位には同じくシュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美早子、3位にトヨタGRヤリスの勝田範彦/木村裕介が入っている。

この日行われたのは3SS、SS走行距離31.16kmという設定。SS4とSS5で『雁峰中リバース(12.75km)』を2度走り、最後にSS6『鬼久保(6.96km)』を走るという内訳。SS4とSS5の間には、45分間のサービスが設けられている。SS4/5で使われるセクションは道幅が狭く、初日と同じ雁峰林道ではあるが、前日よりはアップダウンが少なく性格の異なるステージとなっている。風が強く、時おり雲が流れてくるものの、前日に引き続き晴天のもとでラリーはスタートした。

この日最初のSS4では、勝田がフルアタック。ベストタイムをマークしたコバライネンに対し、1.1秒差に迫るSS2番手タイムという力走を見せて、勝田は総合タイムでもクラス2番手に浮上した。このSSでは、ポジションアップを狙っていたスバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一がコースオフし、リタイアを余儀なくされている。ラリーはサービスを挟んでSS5へ。ドライ路面用タイヤに履き替えたコバライネンは、このSSだけで勝田に対して17.1秒のリードを築くベストタイムをマーク。クラス4番手につけていた奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)はパンクを喫してステージ中の交換を強いられ、大きくタイムを失ってしまった。これでスバルの新井敏弘/田中直哉がクラス4番手に浮上。このSS5では、トヨタGRヤリスの眞貝知志/安藤裕一もコースアウトを喫して、リタイアを喫している。そして迎えた最終SS、ここでもコバライネンは一番時計を刻み、無事にフィニッシュ。すべてのSSでベストタイムをマークし、JN-1クラスで自身初の優勝を飾った。

JN-1クラス優勝のヘイキ・コバライネン(シュコダ・ファビアR5) / Naoki Kobayashi


この最終SSスタートを前にした正午、SS4で数台のタイムが計測されていなかったことから主催者は公式通知No.7を発行。通知には『ラリー開催規定の付則:スペシャルステージラリー開催規定第25条9.に示される、主計測装置ならびに補助計測装置が作動しなかった為、SS4をキャンセルとする』ことが記されていた。これにより、SS4はキャンセルとなり、SS4での勝田と福永のタイム差がリザルトから消滅。最終SSで2番手タイムをマークした福永が勝田を逆転して、2位表彰台を獲得した。勝田は3位、4位に新井、5位に三枝聖弥/石田裕一(スバルWRX STI)という順位になった。

JN-1クラスでの初勝利を挙げたコバライネンは、「これほど速く走れるなんて、自分でも少し驚いているよ。この機会を与えてくれたチームには本当に感謝している。規定上、他のクルマより有利なことは分かっている。それでも、こうやって勝てたことはうれしいね。新城はSS自体の経験があったことも、僕の助けになってくれた。次の唐津は経験があまりないし、今回以上に難しくなると思う。たとえ勝てなかったとしても、ラリーを心から楽しめると思う」と喜びのコメント。次戦から科されるウエイトについても、大きな問題にはならないはずだと自身を覗かせた。2位に入った福永は「最終セクションの2SSは全体的に手応えはありましたが、ちょっと不完全燃焼な感じです。コバライネン選手は速いですが、少しでも差を縮められるように、勉強させてもらうシーズンだと思って頑張ります」と前向きにまとめた。3位の勝田は「2日目はドライで、自信を持って走ることができました。コ・ドライバーの木村選手もすごく良い仕事をしてくれたと思います。うまくいっていたんですが、なかなかコバライネン選手の背中は見えなかったですね」と、ラリーを振り返った。

JN-2クラス優勝の中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) / RALLY PLUS


大きなタイム差が開いているJN-2クラスは、中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)が今シーズン初勝利。今後に向けたテストも兼ねて、様々なトライを行いながらの最終日となったが、きっちりとまとめてラリーを終えた。中平にとっては、2020年11月に行われたツール・ド・九州以来のクラス優勝だ。2位はトヨタGRスープラで参戦したAKIRA/美野友紀が、選手権クラスで初の表彰台を得た。

「久々の優勝なので、うれしいです。次戦の唐津に向けて、色々なセットアップやタイヤ、新しい走らせ方を試すことができました。唐津は得意なステージなので、優勝で終われるように頑張ります」と、中平は次戦に向けた意気込みを語った。2位のAKIRAは、様々な制御の介入に悩まされたものの、「完走できたのが一番ですね。鬼久保に照準を合わせていたので、足もタイヤもバッチリ決まりました。途中で制御が入って130km/h以上に加速しなくなるなど色々ありましたが、完走してデータを取ることができたので良かったです」とコメントしている。

JN-3クラス優勝の竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ) / Jun Uruno


JN-3クラスでは竹内源樹/木村悟士が勝利し、2014年の第1戦で達成した先代のSUBARU BRZ初優勝に続き、新型SUBARU BRZでの全日本ラリー初優勝を達成した。2位には最終日の2SSでベストタイムをマークした山本悠太/立久井和子(トヨタ86)が入り、3位に山口清司/漆戸あゆみ(トヨタ86)という順位となった。僅差の4位には山田啓介/藤井俊樹(トヨタ86)が入っている。

竹内は、「新型での初優勝を目標にしていたので、結果を持ち帰ることができて良かったです。新型はエンジンだけでなく、ボディ剛性やサスペンションも良くなっているので、鬼久保のハイスピードセクションもまだまだポテンシャルに余裕があると感じます。今季はターマックラウンドをしっかり狙って、チャンピオンを目指します」と力強いコメントを残した。JN-3クラス復帰戦となった山本は、「久々のFR車でしたが、2日目は路面も良く、ブランクもあまり感じずに走ることができました。次の唐津もこのクルマ(ZN6)で出る予定です」と振り返った。3位の山口は「ちょっと不完全燃焼ですね。最終セクションはなかなかペースを上げ切れず、周りがペースアップする中、いまひとつでした。全体的に自分で限界を決めてしまった感じです。唐津までは中1週間しかないので、メンテナンスをするくらいですね」と語っている。4位の山田は全日本ラリー初挑戦。「天候や路面変化が厳しい中で、自分の得意不得意が分かりました。今後を考えると、良いラリーになったと思います。今後に向けては、ラリーに対する取り組みや作戦で改善できる部分が多いと思っています」

JN-4クラス優勝の筒井克彦/古川智崇(スズキ・スイフトスポーツ) / Jun Uruno


3台のスズキ・スイフトスポーツが参戦するJN-4クラスでは、初日から順位変動はなく筒井克彦/古川智崇が今季初優勝。2位に奥村大地/Jacky、西川真太郎/本橋貴司が3位という順位になった。前年度チャンピオンの西川はこの日の2SSでいずれもベストタイムをマークし、レグ得点3点を獲得している。

筒井は「SS1のタイヤ選択が分かれ目でしたね。あそこで西川選手が脱落して、奥村選手ともタイム差があったので、勝てる状況を活かして、安全な範囲で攻めることができました。優勝は優勝ですし、うれしいです。次戦の唐津は色々とテストして、タイムでも上位に近づけるようにしたいです」とスイフトスポーツでの初勝利を振り返った。2位の奥村は、「雁峰ではタイムを出すことができなかったんですが、ハイスピードの鬼久保で西川選手に1秒負けと、得意なところで結果が出せたので、次戦に向けて収穫がありました。次は第4戦の丹後に出る予定ですので、それに向けて色々と対策を考えたいと思います」と今後に向けた意気込みをコメント。目標としていたレグポイントを獲得した3位の西川は、「初日の悪夢がなければ……につきますね。唐津までにしっかり反省して、良い結果を残せるよう頑張ります。クルマは十分決まっているので、あとは自分だけですね」と気持ちを切り替えた。

JN-5クラス優勝の天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS) / RALLY PLUS


JN-5クラスは天野智之/井上裕紀子がトヨタGRヤリスRSの全日本ラリー初勝利を飾った。天野は2位の大倉聡/豊田耕司(GRヤリスRS)にSS5で6.3秒差、SS6で0.1秒差をつけて、いずれもベストタイム。最終的に23.1秒差をつける快走で、シーズン初戦を制してみせた。3位にはトヨタ・ヤリスCVTの渡部哲成/橋本美咲が入っている。

天野は「GRヤリスRSでようやく勝つことができました。結果的にはSS1のような、経験の差が出るところでタイム差をつけた感じですね。それがなければ、この展開にはなっていないと思います。安穏とはしていられませんし、今後も接戦になると思うので、集中力が鍵ですね」と、次戦以降に向けて気を引き締めた。一方の大倉は、「コンディションが悪くなると、一気に引き離されてしまいますね。次の唐津は同じターマックですが、全然キャラクターが違いますし、しっかり仕上げたいです。クルマが決まれば天野選手ともトントンで戦えると思っていますので」と、闘志を燃やしている。3位の渡部は「ドライビングもタイヤの使い方も改善していると思うのですが、やはり前の先輩方に引き離されてしまいました。このラリーで課題がたくさん見つかったので、次回に向けて修正していきたいです」とコメントしている。

JN-6クラス優勝の海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) / Jun Uruno


JN-6クラスも初日からの順位変動はなく、トヨタ・ヴィッツの海老原孝敬/蔭山恵が全日本ラリーで初優勝を果たした。2位には佐藤セルゲイビッチ/明治慎太郎(トヨタ・ヤリスCVT)、3位に奥田道裕/阿部琢哉(トヨタ・ヤリス・ハイブリッド)という順位に。海老原がSS5、佐藤がSS6をそれぞれ制する展開となったが、海老原が初日のリードをさらに拡大して、勝利を挙げた。

「やっと勝つことができました。全日本を始めて3年目ですね。平塚(忠博)さんをはじめ、スマッシュの皆さんに助けられて、ここまで来ることができました。コ・ドライバーの蔭山選手ともコンビを組んで長いんですが、やって優勝できました。感無量です」と海老原は笑顔で勝利を噛みしめた。2位の佐藤は「まずリタイアしないことが第一だったので、その目標は達成できました。タイヤ選択以外の面では勝負になっていたと思います。唐津に向けては、ペースノートの作り方が鍵になると思うので、しっかり準備したいです」と、次戦に向けて意気込みを語る。3位の奥田は「SS5では止まっているクルマを避けるためにスローダウンしましたが、だいぶ乗れるようになったと感じます。次戦は丹後に出る予定です。クルマにも手を入れたいですね」と、ラリーを振り返った。

次戦は4月1〜3日にかけて開催されるツール・ド・九州2022 in 唐津。佐賀県唐津市を舞台とするターマックラリーで、新城ラリーとは大きくキャラクターの異なる林道が舞台となる。昨年はシュコダ・ファビアR5の福永が勝利を収めており、コバライネンを交えた展開に注目があつまる。なお、今回の結果を受けて上位3台の最低重量に加算されるウエイトは、コバライネンが+30kg、福永が+20kg、勝田が+10kgとなる。

新城ラリー2022 最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(シュコダ・ファビアR5) 42:22.8
2 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5) +52.1
3 勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス) +54.7
4 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +1:40.5
5 三枝聖弥/石田裕一(スバルWRX STI) +3:36.8
6 竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ) +3:38.1

9 天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS) +4:24.5
14 中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3) +5:23.0
24 海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・ヴィッツ) +8:39.1
25 筒井克彦/古川智崇(スズキ・スイフトスポーツ) +8:57.7



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