RALLY TANGO

開催日時:5月20日(金)〜22日(日)
開催場所:京都府京丹後市
スペシャルステージ本数:12本
スペシャルステージ総距離:108.08km
ラリー総距離:291.07km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.2

全日本ラリー選手権第4戦ラリー丹後は、5月22日(日)の競技最終日を終えて、シュコダ・ファビアR5のヘイキ・コバライネン/北川紗衣が今季3勝目を挙げた。2位には45.1秒差で同じくファビアR5の福永修/齊田美早子。3位にはトヨタGRヤリスの勝田範彦/木村裕介が入っている。

全8戦のシーズン折り返しの1戦となる第4戦の舞台は、京都の北端、丹後半島。スペシャルステージは、半島を南北に貫く丹後縦貫林道を区切って設けられ、初日には北から南へ3SSを2回、2日目には初日のSSを逆走する形で3SSを2回、2日間で計12SSが行われる。したがって、SS走行距離も初日に52.16km、2日目に55.92kmと、似たような長さで争われる。路面はおおむねスムーズ、ところによって道幅が狭くコーナーが連続するセクションや、2車線を目一杯使って走るハイスピードなセクションなど、SSの性格は様々だ。21日(土)、選手たちは京丹後市役所の駐車場に設けられたゲートからSS1へと向かっていく。天候は曇りだが雨の気配はなく、路面はドライという状況でラリーがスタートした。

なお、今季から性能調整が導入されているJN-1クラスは、今大会における最低重量は下記のようになっている。
前戦1位:勝田範彦(トヨタGRヤリス)1298kg(最低重量+50kg)
前戦2位:福永修(シュコダ・ファビアR5)1250kg(最低重量+20kg)
前戦3位:新井敏弘(トヨタGRヤリス)1408kg(最低重量+10kg)
前戦4位:奴田原文雄(トヨタGRヤリス)1258kg(最低重量+10kg)
前戦リタイア:ヘイキ・コバライネン(シュコダ・ファビアR5)1250kg(最低重量+20kg)

レグ1

スタート前に「今回はミスなくしっかり完走することが目標」と語っていたコバライネンが午前中の3SSできっちりベストタイムを並べ、首位でサービスに戻ってきた。この時点で8.6秒差のクラス2番手には勝田、9.0秒差の3番手には奴田原がつけている。ふたりとも、今回のラリーからカーボンボンネットを投入。軽量化による効果よりも、特にエアアウトレットの排熱効果が大きいのだという。サービスを挟んだ午後の1本目、SS4では奴田原がコバライネンを0.1秒下すベストタイム。これで奴田原が2番手に浮上した。福永もSS6で盛り返し3番手にポジションアップ。2番手の奴田原から4番手の勝田まで2.8秒という団子状態で2日目を迎えることとなった。スバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一が5番手、トヨタGRヤリスの眞貝知志/安藤裕一が6番手という格好で初日を終えた。

トップのコバライネンは「マシンのバランスはとてもいいし、フィーリングもいい。でもあまり無理なアタックはせず、コントロールした。明日は今日と同じ戦略で、ミスをしないようにフィニッシュを目指すよ」と、淡々。2番手の奴田原は「ベストをなんとか、頑張りました。いつも頑張ってるんですけどね(笑)。明日はミスしないよう、勝田選手に負けないように頑張ります」と初日を振り返った。SS3で痛恨のスピンを喫しながらも、3番手まで盛り返した福永は「SS6はいい走りができましたが、他がまったく勝負になっていないのがまずいですね。僕が頑張るしかないです」と、打開策を探る。

トヨタGT86 CS-R3の中平勝也/島津雅彦とトヨタGRスープラのAKIRA/美野友紀が走るJN-2クラス。今回ルノー・クリオ・ラリー4でエントリーしていた横嶋良/小藤桂一が不参加となったため、2台での戦いとなった。中平はマシンのセットアップを探り探りのアタック。見た目よりもグリップの薄い路面にアジャストし切れず、本人としては納得のいく出来ではないようだが、6SSすべてでベストタイムをマークし初日を終えている。一方のAKIRAは、ブレーキに厳しい部分もあり、こちらもなかなか思うようなタイムをマークすることができずにいる。

首位に立つ中平は、「クルマの動きはいいのに、今ひとつグリップを得られていない感じがします。午前と午後でセッティングをガラリと変えてみたり、ドライバーも色々な走らせ方をしているのですが、リズムに乗り切れていないですね。ここのコースにクルマを合わせ切れていない感じがします。明日は違うタイヤを試してみるつもりです」と、試行錯誤を語る。2番手のAKIRAは「道が綺麗なので、気持ち良く走りました。ブレーキはキツかったですが、制御の関係もありリヤはノーマルキャリパーしかつけられないので、一生懸命合わせ込んでいます。2ループ目でタイムを伸ばすきっかけがほしいですね。良くも悪くも安定してしまっているので、削れるところを明日は研究したいですね」と、初日を振り返った。

毎戦熾烈な戦いが繰り広げられるJN-3クラスは、4台でのバトル。初日を終えて山田啓介/藤井俊樹(トヨタ86)がトップ、8.6秒差の2番手に竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)、竹内と1.8秒差の3番手に山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)というトップ3が並んだ。山田は1ループ目の3SSすべてを一番時計でまとめ、ラリーをリード。2ループ目最初のSS4は竹内が獲るものの、SS5、SS6と再び山田が2連続ベストタイムをマークし、主導権を握って初日を終えている。

快走を見せた山田は「リズム良く走れました。コ・ドライバーとのコンビネーションもうまくいっています。前戦久万高原の最後の方で『コレかな』と思った感覚を、今回の路面状況でも少しずつ再現できるようになってきています。明日も、リヤタイヤをしっかり使うことを意識して、全体的なタイムアップを図りたいです」と、手応えを語る。2番手の竹内は、「山田選手が崩れず、いいペースで走っていますね。差がないなか、頭ひとつ抜けている印象です。明日に向けてタイヤの選択を少し考えます。SS7/10とSS8/11でしっかり走りたいです」とコメント。3番手の山本は、「セットアップを変えたんですが、あまり変わらなくて、自分がタイムアップした分、周りもタイムアップした感じです。制御の問題でエンジンが吹けなくなるのが頻発していて。大きなタイムロスにはなっていないと思いますが、コンマ差の争いではキツいですね。明日は暑くなるそうなので、体調管理も含めて頑張ります」と気を引き締めた。

スズキ・スイフトスポーツ7台による争いとなったJN-4クラスは、前回勝者の西川真太郎/本橋貴司がアタマひとつリード。7.6秒差の2番手には鮫島大湖/船木佐知子、鮫島から0.5秒遅れに3番手の岡田孝一/河本拓哉、岡田の4.8秒差で4番手の須藤浩志/新井正和が続く状態となっている。アンダーステアに悩みながらも、西川が序盤からリードを築く展開となったが、後続は順位を入れ替えながらの戦いに。後半2番手を守っていた岡田をSS6で鮫島が逆転、僅差で2番手に浮上している。

首位の西川は、「一応トップで戻ってきました。午後はセットアップを変更して乗りやすくなりましたが、タイムは右肩上がりかと思いきや、右肩下がりでした。減衰を固くしていったのが裏目に出てしまったのかもしれません。明日は久万高原のセットアップに戻して、まず走って様子をうかがってみます」と、苦笑い。2番手の鮫島は「出だしはセッティングが合わず、ペースが上がりませんでしたが、午後はベストも獲れて、2位にも上がれました。優勝も狙える位置にいるので、セットアップの方向性を考えて頑張ります」と意気込みを語る。3番手の岡田は、「プッシュしたんですが、タイヤをちょっとケチったこともあって、厳しかったですね(笑)。前後の差が詰まっているので気が抜けないです。明日は優勝目指して展頑張ります」と語っている。

JN-5クラスは、トヨタGRヤリスの天野智之/井上裕紀子が大きくリード。2番手にはマツダRX-8の藤原直樹/中嶋健太郎、3番手にはトヨタ・ヤリスの小濱勇希/竹下紀子というオーダーになっている。小濱は2年ぶりのJN-5クラス参戦だ。ラリーは藤原がSS1とSS2で連続ベストタイムをマークし、序盤をリードする展開でスタート。しかし下り主体となるSS3では、天野がそれまでの差を一気にひっくり返すスーパーベストをたたき出して1ループ目を首位で終える。2ループ目最初のSS4では再び藤原がベストタイムをマークするが、天野も反撃に転じてSS5、SS6を連取。天野は最終的に、藤原に対して15.7秒のリードを築いて初日を終えた。その藤原は2ループ目、ラジエターにピンホールを開けてしまい、冷却水が漏れるトラブル。サービスで必死に修復し、ペナルティなく初日をまとめた。

トップでサービスに戻ってきた天野は「クルマはちょっと熱の面で厳しさはありますが、タイヤに関しては18インチなので余力がありますね。パワーがないので不利になる部分もありますが、これだけクネクネしていると、18インチのメリットを活かすことができると思います。特に明日の逆走でも有利になるのではないでしょうか」とコメント。藤原は「クルマの仕上がりはかなり良く、2ループ目にニュータイヤを入れてタイムアップを狙ったのですが……。ラジエターは応急処置を施しましたが、明日は少し不安です」と、懸念を残すかたちとなってしまった。3番手はMTのヤリスで参戦する小濱。「2年前に唐津で優勝した時はRPN車両でしたが、今回はRJ車両になって、大きく進化しています。それでも天野選手がやっぱり強いですね。JN-5クラスは日々進化しているクラスだと実感します。明日はガラリとセットアップを変え、サーキットのようにスタビリティを上げて臨みます。ドライバーにはピリ辛の方向ですが」と、追撃に気迫を見せた。

5台が参戦するJN-6クラスは、トヨタ・ヴィッツの海老原孝敬/蔭山恵がトップ。2番手には同じくトヨタ・ヴィッツの兼松由奈/原田晃一、3番手にマツダ・デミオの中西昌人/有川美知代という展開となった。海老原は序盤安定したペースを発揮したものの、午後のSS4ではエンジンの制御が介入してしまいペースを上げ切れず。それでも6SSすべてを制して後続に大きなマージンを築いている。2番手には、約1年ぶりの全日本ラリーとなる兼松。思うような走りができず、2ループ目でタイムを落としてしまう我慢の展開となった。

ここまで勝利を重ねている海老原は、「レッキや前戦からフィードバックしたセットアップがハマり、序盤は作戦どおりに行きました。午後はSS4でエンジンが吹けなくなるなどの症状が出てしまいました。セットアップもうまくいくようになってきたので、明日もこの調子のまま走りたいです」とコメント。2番手の兼松は「なかなかうまく走れませんでした。ちょっとクルマに色々と難しさを感じています。仕様は以前と変わっていないはずですが、自分の運転が変わっているのかもしれません。明日はこの位置を守れるよう頑張ります」とのこと。3番手につける中西は「クルマにエラーが出てしまって、全部がセーフティがかかった状態で走りました。ずっと床まで踏んでました。エラーが入り始めた時の対処が分からなくて、それがキモでしたね。明日に向けて、なんとかトラブルを解消したいですね」と、終日トラブルに悩まされてしまった。最終サービスでマシンを修復して、翌日のポジションアップに挑む。

レグ2

この日は、初日に設けられたステージを逆走する格好で行われる。丹後半島の丹後縦貫林道を北上し、3SSを2度走行する。6SS合計のSS距離は55.92km。全体的な傾向としては上りが主体のコースとなるが、特にオープニングステージのSS7/10 Nariai Reverseをポイントとして挙げる選手が多い。特に秒差の競り合いをしているクラスにとっては、スタートダッシュが重要な意味を持ちそうだ。サービスパークでの天候は、雲ひとつない快晴。例年強い日差しが照りつけるラリー丹後らしい天候のもと、各選手ともサービスでの短い作業を終えて、ステージへと向かっていった。

JN-1クラスでは、コバライネンが相変わらずの強さを発揮して、この日の6SSすべてを制して危なげなくシーズン3勝目を獲得。係数1.2のラリーでしっかりとフルポイントを獲得し、ランキング首位に立っている(編集部調べ)。2位の福永は、コバライネンに次ぐタイムをきっちり並べる好走。特にSS9ではコバライネンと0.7秒、SS12では0.4秒差に迫るスピードを見せた。3位は勝田。奴田原文雄/東駿吾との接近戦をモノにして、今季の4戦すべてで表彰台に入る強さを発揮している。4位には奴田原、5位にはスバルWRX STIの鎌田卓麻/松本優一が入っている。

首位でラリーを終えたコバライネンは、「とても良かったよ。気温が上がって、タイヤのグリップぺレベルも向上した。ダウンヒルはとても難しかったけど、全体的にいいペースで走れた。久万高原の後にしっかりマシンを直してくれたアイセロ・チームのみんなには心から感謝している。セットアップやドライビングの進化を実感しているから、次も楽しみだね」と、笑顔でコメントした。2位の福永は「もう少し、やるべきことがありますね。ヘイキ選手とはだんだん詰まってきていますし、次のモントレーではSS1本でもベストを獲れるようにしたいですね。長いSSの方がミシュランには分がある気がします」と、手応えを語っている。3位に入った勝田は「奴田原選手とはかなり僅差の争いになりました。50kgを積んでいるものの、ひとつでも上の順位を獲りたかったので、最終日に上まわれたのは大きかったです」と笑顔でラリーを振り返った。

JN-2クラスは中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)がシーズン4勝目を獲得。2位はトヨタGRスープラのAKIRA/美野友紀。中平は前日に続き、セットアップの最適解を探りながらのドライビング。試行錯誤を繰り返すなか、午後のループでは手応えを得つつあり、次戦のモントレーに臨む。AKIRAはエンジンが吹けなくなる症状に悩まされながらも、全SSを走り切ってフィニッシュ。実質2台の戦いとなっている中、取りこぼしなくポイントを重ねている。

中平は、「色々と試してみましたが、午後のループではタイヤに合わせてセッティングを変えたのが良い方向に出て、セッティングとドライビングが噛み合ってきたという感じがあります。ただ、体感の速さに思ったほどタイムがついてこないので、そのズレを、テストなどを重ねてしてなんとかしたいですね」と課題を語る。一方のAKIRAは、「SS8でまったくエンジンが吹けなくてちょっと辛かったですね。足まわりは良くなって、だいぶ鼻先を入れることができるようになった。ブレーキがもう少し慣れたら、もっと行けると思います」と、笑顔を見せた。

JN-3クラスは、前日トップの山田啓介/藤井俊樹(トヨタ86)がさらにペースを上げて、前半3SSを連続ベストでまとめる快走。追いすがる新型2台との差を一時は20秒以上に拡大し、今シーズン2勝目を飾った。14.2秒差の2位に竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)、竹内と4.7秒差の3位に山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)が続くかたちとなった。この日の2ループ目では、竹内が2回、山本が1回ベストタイムをマークするが、山田を追い上げるには至らず。

初日に稼いだマージンを活かすラリー運びを見せた山田は、「初日のリードもあったので、今日の1ループ目は全体的に進入速度を高めて、稼げるところでしっかり稼いだのが、結果につながったと思います。後半も差を見ながら走ることができました。ペースノートの精度が上がっていることで、リズム良く、ダンスを踊っているように、気持ち良く走れました」と、手応え。2位竹内は「自分が現状のBRZでできることはやって、タイム的にも悪くないのですが、純粋に山田選手がとりこぼしなく速かったですね。次は前半最後のターマックですし、地元ですし、路面も難しいので、若い山田選手に経験の差を見せられればと思っています」と、リベンジを誓う。3位の山本は、「2ループ目で離されてしまいました。まだGR86の方向性がハッキリとしていないので、次のモントレーまでになんとかしたいですね。もう少しテストを重ねていけたらと思っています」とのこと。違和感は少なくなってきたと語るが、まだ課題もあるようだ。

スズキ・スイフトスポーツ同士のバトルが繰り広げられるJN-4クラスは、西川真太郎/本橋貴司が前戦に続く連勝。2位にはこの日の2ループ目で速さを見せた東隆弥/藤澤進、3位に鮫島大湖/船木佐知子という順位となった。前日首位の西川は前戦と同じセットアップで臨んだ1ループ目で大きくタイムアップ。最初の1ループ目を終えた時点で2番手の鮫島に26.6秒差をつけてリードを拡大した。この時点で2番手争いは激しさを増しており、2番手鮫島から5番手の東まで、9.9秒の間に4台がひしめく状態に。2ループ目のSS10、SS11では、西川に次ぐSS2番手タイムをマークした東が一気に2番手に浮上。しかしこの時点で4台の差は、2番手東から5番手の岡田孝一/河本拓哉まで8.6秒とさらに短縮されることに。そして迎えた最終SSでは、東がSS3番手タイムをマークし、逃げ切って2位を決めた。

連勝を果たした西川は、「初日の反省を活かして、減衰などを元に戻した結果、タイムが飛躍的にアップしました。余計なことはするものではないなと(笑)。2ループ目はセットアップも安定し、単純に楽しめましたね。東選手が予想を上まわる速さですね。JN-4が盛り上がるのはうれしいですし、また戦えるのが楽しみです」と笑顔を見せた。この日5番手からスタートして2位の東は、スイフトスポーツでの初参戦。「クルマが乗りやすくて懐が深いので、安心して踏めました。プッシュしようと、頑張って攻めた甲斐がありました」とコメント。3位の鮫島は「減衰とかセッティングを調整したんですが、踏み切れるセットにたどり着かず、そのタイミングで東選手に行かれてしまいました。次の参戦は最終戦のハイランドを予定しています。地区戦も使ってしっかりセットアップを考えたいと思います」と、悔しさをにじませた。

JN-5クラスは、トヨタGRヤリスRSの天野智之/井上裕紀子が今季負けなしの4勝目を獲得。2位にはトヨタ・ヤリスの小濱勇希/竹下紀子。3位はマツダRX-8の藤原直樹/中嶋健太郎が入っている。気温、路面温度とも上昇をするなか、天野はCVTユニットと熱の相性を探りながらのドライビング。それでも、この日の6Sすべてでベストタイムをマークし、貫録を見せつけた。2番手争いを展開する藤原と小濱は、SS7でクラッシュ車両があったためにノーショナルタイムが与えられ、実質5SSでの戦いに。小濱は、藤原がSS10でタイムダウンしたところを捉えて2番手に浮上、そのまま逃げ切る展開となった。

GRヤリスRSを全日本に投入して約1年となる天野は、「ベストは獲れましたが、全部僅差でデイ1のようにタイムは出なかったですね。熱でCVTがどこまで無理できるのかが分からないので、アクセルが鈍っています。やっぱり暑くなってくると、厳しいと感じました。データ的にはそこまでではないはずなんですが、パワー感が失われていますね」と、勝利のなかに課題も。2位の小濱は、「セットアップの変化の効果は出せていますが、限界ギリギリまで攻めて、天野選手にようやく並ぶかどうか、というくらいでした。次までにできることをチームと相談し、もっといいクルマにしてきます」と意気込みを語る。3位の藤原は、「ちょっと1本、タイムダウンしたSSがあって、小濱選手にやられてしまいました。クルマは乗りやすいのですが、熱ダレの問題があって、それを対策しないと。最後はヒーター全開にして良いタイムを出せたので、やはり水温の問題かもしれません」と振り返った。

JN-6クラスは、トヨタ・ヴィッツCVTの海老原孝敬/蔭山恵が初日のリードを活かして勝利、2位には同じくヴィッツCVTの兼松由奈/原田晃一、3位にはマツダ・デミオの中西昌人/有川美知代が入っている。SS7でのアクシデントにより、このクラスも全車ノーショナルタイムが与えられているため、実質5SSでの戦いに。海老原は5つのステージすべてでベストタイムをそろえ、今シーズン4勝目。

「勝てて良かったです」と海老原。「終盤の2本では溝がギリギリ残っていたので、なんとかうまくまとめられました。次のモントレーは舗装なんですが、グラベルのように荒れた路面があるとも聞きます。そういう場所では制御が入りやすいと思うので、そこの対策を考えて挑みたいです」と、次戦に向けての意気込みを語っている。2位の兼松は、「乗りにくかった部分を改善してもらって、タイヤも替えて、フィーリングが良くなりました。ベストタイムを獲りたかったですが、それができなくて残念です」と、ラリーを振り返った。兼松はモントレーにも同じくヴィッツで参戦予定という。3位の中西は、「初日のトラブルは解消しましたが、ABSが多発するなど、別の問題が出てしまいました。ただ、クルマの方向性は見えたので、3週間で改善して次も頑張りたいです。コ・ドライバーが熱中症でダウンしてしまったので、次に向けてそうした部分も考えないとですね」と、語っている。

次戦は6月10日〜12日にかけて、群馬県富岡市を拠点として行われる「モントレー2022」。群馬県南部の林道を舞台とするターマックラリーで、10SS、SS距離125.54km、総走行距離507.18kmで争われる。昨年は福永修/齊田美早子のシュコダ・ファビアR5が優勝しており、コバライネンとの競り合いにも注目が集まる。今回の結果を受け、上位3台の最低重量に加算されるウエイトは、1位のコバライネンが+30kg、2位の福永が+20kg、3位の勝田が+10kgとなる。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 Heikki Kovalainen/北川紗衣 AICELLOラックDL速心FABIA 1:20:08.6
2 JN1-2 福永 修/齊田美早子 アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア 1:20:53.7
3 JN1-3 勝田範彦/木村裕介 GR YARIS GR4 Rally 1:21:05.2
10 JN3-1 山田啓介/藤井俊樹 K1ルブロスitzzソミック石川YH86 1:24:40.8
14 JN2-1 中平勝也/島津雅彦 DL SYMS R-ART 86 R3 1:26:16.9
15 JN4-1 西川真太郎/本橋貴司 スマッシュDLモンスターitzzスイフト 1:27:10.1
16 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・GRヤリスRS 1:27:44.8
36 JN6-1 海老原孝敬/蔭山 恵 スマッシュ DL itzz ヴィッツ 1:33:39.4

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 Heikki Kovalainen/北川紗衣

JN2クラス優勝 中平勝也/島津雅彦

JN3クラス優勝 山田啓介/藤井俊樹

JN4クラス優勝 西川真太郎/本橋貴司

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀子

JN6クラス優勝 海老原孝敬/蔭山恵