久万高原ラリー

開催日時:10月30日(土)〜31日(日)
開催場所:愛媛県久万高原町
スペシャルステージ本数:8本
スペシャルステージ総距離:110.10km
ラリー総距離:341.60km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ/ウエット
ポイント係数:1.2

全日本ラリー選手権第4戦久万高原ラリーは10月31日(日)にすべてのスケジュールを終え、トヨタGRヤリスの勝田範彦/木村裕一が今シーズン4勝目を飾り、JN1クラスのチャンピオンを確定させた。勝田にとっては9度目、木村にとっては初の戴冠だ。JN3クラスはトヨタ86の大竹直生/藤田めぐみがチャンピオンに輝いている。

10月30日(土)にスタートを迎えた全日本ラリー選手権第4戦久万高原ラリー。もともと5月に開催される予定だったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって10月に延期され、実質的な最終戦としての開催となった。2020年には新型コロナの影響で開催を断念していたため、2年ぶりの開催だ。ただし、これまで久万高原ラリーの代名詞とも言える尾根沿いの『大川嶺』が崩落のために使えず、SSは森の中のワインディングロードが舞台となった。

レグ1

競技初日の天候は晴れ、ドライコンディションのもとで2SSを3回走行する計6SS、63.54kmという構成だ。ループごとにサービスが設けられる変則的なスタイルがとられている。これまでも使ってきたことのある林道だが、2年ぶりということでコケが生えている部分があったり、インカットで砂利が掻き出される部分があるなど、ひと筋縄ではいかないと、レッキを終えた選手たちは語っていた。さらに2日目の日曜日には降雨の予報も出されており、各選手とも警戒しながらの初日スタートとなった。

JN1クラスは勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス)が福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビアR5)に3点のリードという緊迫した状況だ。オープニングステージのSS1は、勝田が先制。SS2番手に新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)、SS3番手に鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)が続き、福永は7.6秒差の4番手に。しかし福永もここから怒濤の巻き返しに転じ、SS2〜SS4まで3連続ベストタイムをたたき出して勝田に8秒差をつける首位に躍り出た。この日2度目のサービスで2本新品のタイヤを投入した勝田はSS5で一番時計をマークし、福永との差を1.8秒にまで縮めることに成功した。そして最終SS6では福永、勝田ともに10分55秒9という同タイムでのベスト。緊迫した戦いは最終日の2SSに持ち越しとなった。

3番手には新井大輝、4番手には新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)とスバル勢が続く。今回のラリーで使用できるタイヤの最大本数は8本。新井敏弘と大輝は最初の2SSを終えた段階で想定以上にタイヤの摩耗が進んでいたため、4本とも新品に交換。この日を終えた段階ですでに8本分を使い切ってしまった。5番手には奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス)、翌日に備えて4本のみで走り切った鎌田は6番手で初日を終えた。

鎌田と同じくタイヤ4本で初日を走り切った首位の福永は「最後のSSはタイヤも厳しいなか、かなり頑張りました。出し尽くしたくらい踏みました。溝の中を走ったり、紙一重の場所もありましたし、ここまでこのクルマで踏んだことはなかったですね。明日は今日の最後の走りができれば、いけると思っています。とにかく頑張ります」と振り返った。2番手につける勝田は「僕は今日6本使ってしまったので、明日の天候がどうなるかです。いたわりながら走ったので使える部分を残しましたが、厳しいですね」とコメントしている。3番手の新井大輝は、「8本もタイヤを使ってしまいました。それに尽きます」と苦笑い。「サスペンションのセットアップがすごく良くなりました。KYBと一緒に開発しているんですが、去年の今頃は1kmあたり1秒くらい離されていたのが、ちゃんと戦えています。トラブルも一切なかったですし、クルマも乗りやすくなっているんですが、トップが速すぎますね」と、この日を振り返った。

JN2クラスは前戦のハイランドマスターズでチャンピオンを決めたヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が6SSすべてでベストタイムを並べ、クラストップを快走。2番手には中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)がつけている。やや離れた3番手はレクサスRC Fで参戦する石井宏尚/竹下紀子が続いている。4番手には中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)という順位。

2番手の中平に対して58.8秒のリードを築いたトップのコバライネンは、「すべてOKだし、問題ないよ。タイヤのウォームアップも問題ないし、アタックしてもスタビリティもばっちりだった。目標にしていた最初のループからいい走りができたし、ペースノートもここまで悪くないし、すごくハッピーだよ」と笑顔を見せる。2番手につけた中平はセットアップで苦戦し、午後にかけて様々なセットアップを試しながらの走行に。「色々なセットアップを試して、ようやくクルマの動きとして、満足できるところまできました。ただ、自分の体感と実際のタイムが離れていってしまっていて、困っています。気持ち的には速くなっているはずなんですが、伸びがそこまで大きくないという状況です。明日に向けては、かなり泥が出ていると思うので、今日の段階でノートをチェックしたいと思います」と1日を振り返った。3番手の石井は「道には慣れてきたんですが、後半はリヤが厳しかったです。明日はやっぱり天気がどうなるかですね。中村選手との一騎打ちになると思うんですが、今日のマージンを吐き出して、いい勝負になりそうです」と語っている。

JN3クラスは、チャンピオン候補の3台による首位争いが展開された。トップは鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)、8.9秒差の2番手に長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が続き、長﨑から30.2秒離れた3番手には大竹直生/藤田めぐみ(トヨタ86)という順位になっている。首位の鈴木は前戦ハイランドマスターズでも勝利を挙げており、その勢いを今大会でも維持したいところ。鈴木と長﨑はベストを獲り合い、SSごとに順位を入れ替える接戦を展開、最終的に鈴木がリードを収めている。一方、第10戦を終えた段階でランキングトップの大竹はSS4でパンク。タイムロスは最小限に抑えたものの、最後の2SSではリズムに乗り切れずに遅れを喫している状況だ。4番手には山口清司/丸山晃助(トヨタ86)、5番手には全日本ラリーとして初めて新型BRZを持ち込んだ竹内源樹/木村悟士がつけている。

首位の鈴木は「疲れました。最終SSのSS6でリードを広げようと頑張って攻めたんですが、思ったようなリードは得られませんでした。あってないような差ですが、あっても損はしないので、これで良かったかなと。明日はこれからの天気次第で、色々と変わってくると思います」とSS6を終えてコメント。対する長﨑も、「行けるコーナーと行けないコーナーの見極めが重要ですね。ちょっと離されてしまいましたが、雨が降るみたいなので、差はあってないようなものなのかなと。それは前も後ろも同じなんですが。雨の量がどのくらいになるのか。どのくらい残っているのかがキモになると思います」と天候の行方を注視する。3番手の大竹は「悔しいですね……。2ループ目のパンクが良くなったです。最後もリズムに乗れなかったので、明日のロングSSで頑張るしかありません。雨でコケが元気になってしまうのは困るので、明日はそれだけは注意したいです」と苦笑いでこの日を振り返った。4番手の竹内は「暫定仕様ではありますが、セットアップを変えながら、ようやく走れるようになってきました。色々とやりたいことも見つかりました。明日は雨が降るということですが、このクルマはすごく合っていると思うので、明日は明日でしっかり巻き直して走りたいです」と、新型の感触を確かめた。

JN4クラスは、前戦でチャンピオンを決めた西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が欠場。岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ)が4連続ベストタイムをマークし、2番手の鮫島大湖/船木佐知子(スズキ・スイフトスポーツ)に7.0秒のリードを築いてクラス首位に立っている。3番手は、ステージの木漏れ日が見づらくペースをつかみ切れなかったという香川秀樹/松浦俊郎(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)。

僅差で首位を走る岡田は「減衰を変えてからクルマが良くなりましたね。道もだいぶ分かってきたので、2ループ目から行けるところは攻めました。プッシュした甲斐があってSS5で逆転して、SS6でも少し差をつけることができました。明日は雨の予報ですが、どうなりますか」と、翌日の天候を警戒する。2番手の鮫島は「少しずつ課題は修正できているんですが、岡田選手が中盤からどんどんペースを上げていて、なかなか追いつけないですね。まだまだです。もう少しペースを上げていきたいですね。雨が降ってしまうと、また別の課題がでてきてしまうので、天気はなんとか持ってほしいですね」と振り返った。3番手の香川は「思ったよりも、クルマが走っていないですね。前戦のハイランドから見直してきたんですが……。今日は3周同じタイヤで行ったんですが、消耗が激しくダメでしたね。タイムも全然伸びなくて。明日は完走をしっかり目指します」と、難しい表情をみせた。

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS)がトップ。12.2秒差の2番手には大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)、3番手には小川剛/梶山剛(ホンダ・フィット)、4番手に内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)というオーダーに。序盤から3連続ベストタイムで首位を快走していた渡部哲成/佐々木裕一(トヨタ・ヤリス)はSS4で側溝に落ち、脱出に時間がかかり大きくタイムロス。勝負権を失ってしまった。
天野は「今日は登りがけっこうあって、そこでタイムを落としてしまっています。タイヤもブレーキもいいんですが、やはり重量があるので根本的にヨーが大きく、ヒラヒラとは走ってくれないですね。最後のループではフレッシュタイヤを入れたので、SS5でもベストタイムが獲得できました。SS6もベストだったので、ひとまずは良かったです。天気が悪くなったら、フロントだけ切り替える感じです」と振り返っている。2番手の大倉はGRヤリスRSではなくヴィッツでの参戦。「ちょっとブレーキとタイヤが厳しくて、それを考えながらの走りでしたが、全体的には良かったと思います。渡部選手はもったいなかったですね。彼のペースには追いつかなかった。明日はウエットのようなのでショックを変更して臨みます」と語った。3番手の小川は、「タイヤが厳しかったのですが、ショックのセッティングを変えたことで、安全に走れました。タイヤを温存できたので、雨が降ってくれれば、楽しみです」と、笑顔を見せた。

山本雄紀/井上草汰(トヨタ・ヤリスCVT)がリードするJN6クラス。前戦ハイランドマスターズで全日本ラリー初優勝を飾った山本は、この日の6SSすべてでベストタイムをマークする走りを見せ、2番手の海老原孝敬/原田晃一(トヨタ・ヴィッツ)に対して1分28秒3というリードを築いている。3番手には水原亜利沙/美野友紀(トヨタ・ヤリスCVT)という順位となっている。
山本は「思っていたよりも走りやすく、自分が好きな感じの道でしたが、SS4~SS6はあまりタイムが伸びませんでした。明日は雨の予報もありますし、ノートをしっかりチェックして、リードをキープしたいです。ただ濡れているのはOKなんですが、荒れた路面で濡れてしまうと、おさえすぎてしまうので、前戦からの課題ですし、今回はもう少し上手く走りたいですね」と初日の走りについてコメント。2番手につけた海老原は「後半にようやく少し差を縮めることができましたが、まだ負けてしまっています。明日雨が降れば少しはパワー差がなくなると思います。こっちが20馬力くらい低いので、それがどうなるかですね」と意気込みを語る。3番手の水原は「1ループ目の後にセッティングを変えてもらって、ショートステージではタイムアップできました。戻ってしっかりと明日に備えたいと思います。雨でひと波乱ありそうなので、自分たちも気をつけたいです」と、この日を振り返った。

競技最終日の10月31日(日)は、23.38kmを2回走行する2SS、46.56km。初日の2SSをつなげて逆走するという構成だ。初日にインカットで掻き出された砂利が、今度はコーナーの進入に影響を及ぼす部分も出てくる。天候は夜半から雨の予報が出ており、その雨がいつ止むか、どのくらい降るのか、様々な不確定要素が絡む展開が予想された。なお、2021年全日本ラリー選手権統一規則には、『安全上必要と判断した場合、競技長の宣言により規定本数に追加して2本使用することができる』と記載されている。雨が降るなどしてこの宣言が出れば、タイヤの最大使用可能本数は8本+2本で計10本に。しかし、この宣言がなされるかどうかは路面状況による部分が大きく、競技初日を終えた段階では、宣言が出るかどうかは分からないまま。各選手とも天候を気にしながら、競技2日目を迎えることとなった。

レグ2

競技2日目は23.38kmを2回走行する2SS、46.56km。初日の2SSをつなげて逆走するという構成だ。夜半から降り始めた雨はコースを濡らし、ウエット路面でのスタートとなった。天候は回復基調ではあるものの、ステージでは霧が出るなど難しいコンディション。朝7時30分には『安全上必要と判断したので本競技会で使用できるタイヤ本数を2本追加し、10本とする』公式通知が発行された。

1.8秒差の接戦となったJN1クラスは、この日最初のSS7で勝田が大きく差をつけるベストタイムをマーク。対する福永はタイヤと路面がマッチせず、30.3秒差のSS3番手に。これで勝田が福永を逆転、28.5秒のリードをもって最終SSに臨むこととなった。SS2番手タイムをマークしたのは、前日を6番手で終えていた鎌田。これで一気に4番手に浮上し、さらなる順位アップを狙う。サービスを挟んで迎えた最終SSは、勝田が再度のベストタイムをマーク。福永もSS7での勝田のタイムを上まわったものの、3.1秒およばずSS2番手タイムに。これで両者の差は31.6秒となり、勝田が今季4勝を挙げてタイトルを獲得することとなった。2位フィニッシュの福永は選手権ランキングでも2位に。鎌田は最終SSで3番手タイムを刻み、新井大輝をかわして3位入賞。5戦連続3位とコンスタントにポイントを重ね、選手権3位を確定させた。

勝田は「前戦のハイランドもですが、天候に助けられた感じがしますね。一時は厳しいかと思っていましたが、なんとか這い上がれました。久々のタイトルですし、木村選手にとっても初のタイトルです。グラベルラリーのカムイで勝てたことが、自分にとってもチームとしても、大きなステップアップになったと思います。応援、ありがとうございました」と笑顔でコメント。2位の福永は「自分のウデにがっくりしました。SS7もSS8と同じ仕様でいけば良かったと」と言葉少なに振り返った。作戦どおりに順位を上げ、3位に入った鎌田は「思ったより最終SSがドライ寄りでグリップが良く、他のクルマもタイムが上がると思ったので、最後まで全開で走りました。これでシリーズ3位に入れました」とコメントしている。

JN2クラスは初日にリードを築いているヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)が優勝、今季参戦した6戦すべてを勝利でまとめた。2位には中平勝也/島津雅彦(トヨタGT86 CS-R3)、3位には石井宏尚/竹下紀子(レクサスRC F)が入った。コバライネンはこの日の2SSでもベストタイムを譲らず、今大会の全SSを一番時計で終えている。
コバライネンは「1本目はとても難しく、あまり良くなかったね。マシンとタイヤはOKだったけど、僕自身のドライビングが注意深くいきすぎて、自信を持って走れなかった。特にハイスピードセクションでのブレーキングがイマイチだった。2本目のフィーリングは良くなって、いつもどおりの走りができた。いいシーズンを送れて、すごくうれしいよ」と手応えを語っている。2位の中平は「SS7ではセッティングが合わず、クラッシュをしかけてしまいました。コンディションが悪い時の対応力を上げるためには経験を積んでしていくしかないですね」とコメントしている。3位の石井は「路面を読む力が圧倒的に足りてないことを実感して、それがひとつ反省としてありますね。コバライネン選手の昨日のインカーを見て、タイヤにどれくらいの負荷を掛けるべきかのか、考えさせられました。コバライネン選手はブレーキを手前で終わらせて、姿勢を作ってコーナーに入っている。それが分かったので、最後のSSはタイヤのライフが終わっていても、今までのベストを出せました」と、ヒントを得たと語っている。

上位3台による争いとなっていたJN3クラスは、SS7を終えた段階でトップに立った長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)が、なんと最終SSでコースアウトを喫する波乱の展開に。最終SSで大竹直生/藤田めぐみ(トヨタ86)の追撃をしのいだ鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)が、前戦ハイランドに続いて優勝を飾ることとなった。これで2位に入った大竹/藤田のチャンピオンが確定した。3位には、最終SSでベストタイムをマークした山口清司/丸山晃助(トヨタ86)が入っている。また、4位の竹内源樹/木村悟士はSS8でSS2番手タイムを刻み、新型BRZのポテンシャルを垣間見せた。
JN3クラスチャンピオンを決めた大竹は「1本目は、今年の雨のステージで、一番攻めることができた手応えがあります。最後のSSではエンジンが壊れてしまい、全然パワーが出なかったので、半ば諦めながら戻ってきましたが、しっかり走り切るといいことがあるものですね。今季グラベルは良かったんですが、ターマックがダメで、足踏みしてしまいました。最後に苦手だったウエットターマックもタイムが出たので、良かったと思います」と笑顔。一方、わずか3ポイント差でチャンピオンの座を逃した鈴木は、「踏んだり蹴ったりの2日目でした。1本目でスピンして、2本目で前後をぶつけて。本当にラリーって終わるまで、何が起こるか分からないと実感しています。こんなに悔しい勝ちは初めてです」と、今季3勝目を振り返っている。3位の山口は「最後はエンジンも調子が良く、最後まで頑張れました。ベストでシーズンを終われたので良かったです」と語った。4位の竹内は、「最後は山口選手にまくられてしまいましたが、暫定仕様で走りながら、色々なテストができたのは良かったです。今後速くなる要素しかないですし、今回投入できたことは、来年以降に活きると思います」と、新型に期待を寄せた。

JN4クラスは鮫島大湖/船木佐知子(スズキ・スイフトスポーツ)が岡田孝一/河本拓哉(スズキ・スイフトスポーツ)を逆転して全日本ラリー初優勝を達成。3位には香川秀樹/松浦俊郎(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が入っている。前戦ハイランドではウエット路面が課題と語っていた鮫島がSS7で一番時計をマークし首位に立ち、さらにSS8でもベストを重ねることに成功。うれしい初優勝を達成した。
鮫島は「なんとか前回の反省を活かして、頑張って攻めました。とにかく今の走りをきちんとやることですね。まだ余しているところがあるので、ひとつずつ詰めていきたいです。最後には2位の岡田選手をグッと離すことができました。気持ちよく走れました」とラリーを振り返った。岡田は「やられてしまいましたね。コ・ドラを育成中なので、まだ2~3戦で優勝したらよくない。もう少し試練が必要です(笑)。クルマ的にはしっかり仕上げてくれましたが」とコメント。3位の香川は「走り切ることができて良かったです。フロントの接地感がなくて踏めず、ウエットは得意なのに、まったくダメでしたね。ナビのシリーズ2位がかかっていたので、絶対落ちないように走りました」とラリーを振り返った。今回のラリーで香川/松浦ともにシリーズ2位を決めている。

SS7を終えて首位をキープしていた天野智之/井上裕紀子(トヨタGRヤリスRS)がサービス後のマシントラブルでリタイアという予期せぬ展開となったJN5クラス。前日から大きく順位が変動し、ホンダ・フィットの小川剛/梶山剛が前戦に続く連勝を挙げた。2位には4.1秒差で内藤学武/小藤桂一(トヨタ・ヤリスCVT)、3位には大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)という順位になった。特に小川はSS7を終えた段階で大倉と51.8秒の差があり、最終SSでの大逆転劇となった。
小川は「SS7は霧で前が見えなくて、怖くてストレートエンドで抑えるほどでした。最後はダンロップのディレッツァ93Jを使ったんですが、びっくりするほどコントロールしやすくて。こんな路面で楽に走れて、タイヤは大事だと実感しました(笑)」と連勝に笑顔を見せた。2位の内藤は「最後に小川選手に抜かれてしまって、悔しいです。最後のSSはちょっと攻めきれませんでした。ヤリスはパッケージとしてはすごくいいです。剛性もあって、重心も低いですし、下のトルクもあります」とコメント、デイ別得点3点を持ち帰った。3位の大倉は「がっつりやられてしまいましたね。タイムアップできる路面だったんですが、力不足です」と肩を落とした。

JN6クラスは前日に続いて山本雄紀/井上草汰(トヨタ・ヤリスCVT)がベストタイムを並べて今季2勝目という強さを見せた。2位には海老原孝敬/原田晃一(トヨタ・ヴィッツCVT)、3位に水原亜利沙/美野友紀(トヨタ・ヤリスCVT)という順位でラリーを終えた。山本は前戦ハイランドマスターズに続き、参戦2戦で2勝という好成績。
山本は「SS7は、危ない路面がいくつもありました。初日、2日目と路面状況が目まぐるしく変わって、走りがいのあるラリーでした。十分リードがあったので、無事に、全SSベストでラリーを終えることができたので良かったです」と、振り返っている。2位の海老原は「ちょっとタイヤ選択をミスしてしまったので、山本選手に置いていかれてしまいました」とコメント。来シーズンは現在乗っているヴィッツとアクアをリフレッシュして、グラベルとターマックで使い分けることを検討しているという。3位の水原は「1本目は探り探りで、だいぶ離されてしまいましたが、2本目では1本目よりも車速が上がっていたので、スピンして落ちてしまいましたが、なんとか戻ってくることができました」と、タイムロスしながらも完走を果たした。

これで2021年シーズンの全日本ラリー選手権は全日程を終了した。11月3日時点で2022年の選手権カレンダーはまだ出ていないが、2022年2月4日〜6日に開催される予定のRally of Tsumagoi 2022は全日本ラリー選手権からは外れる可能性がありそうだ。10月27日発行のラリーガイド1では、APRCと東日本ラリー選手権シリーズ、日本スーパーラリーシリーズの3つにタイトルがかかるとされている。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 勝田範彦/木村裕介 GR YARIS GR4 Rally 1:26:05.8
2 JN1-2 福永 修/齊田美早子 アサヒ☆カナックOSAMU555ファビア 1:26:37.4
3 JN1-3 鎌田卓麻/松本優一 WinmaX DLシムス WRX STI 1:27:39.1
8 JN2-1 Heikki Kovalainen/北川紗衣 AICELLOラックDL速心GT86R3 1:30:14.9
9 JN3-1 鈴木 尚/山岸典将 スマッシュDL itzzコマツBRZ 1:31:56.2
19 JN5-1 小川 剛/梶山 剛 itzz DL BRIDE AN Fit 1:35:43.5
22 JN4-1 鮫島大湖/船木佐知子 el・DL・正和・ANIKI スイフト  1:36:21.6
26 JN6-1 山本雄紀/井上草汰 KYB DL ヤリス 1:40:37.5

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN1クラス優勝 勝田範彦/木村祐介

JN2クラス優勝 Heikki Kovalainen/北川紗衣

JN3クラス優勝 鈴木尚/山岸典将

JN4クラス優勝 鮫島大湖/船木佐知子

JN5クラス優勝 小川剛 /梶山剛

JN6クラス優勝 山本雄紀/井上草汰