全日本ラリー唐津:新井大輝/松尾俊亮がシュコダ・ファビアR5で初優勝 – RALLYPLUS.NET ラリープラス

全日本ラリー唐津:新井大輝/松尾俊亮がシュコダ・ファビアR5で初優勝

©JN-1クラス優勝の新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)/Jun Uruno

2024年シーズンの全日本ラリー選手権第2戦「ツール・ド・九州2024 in 唐津」(ターマック)が、4月12日(金)~14日(日)にかけて、佐賀県唐津市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスはシュコダ・ファビアR5をドライブした新井大輝/松尾俊亮が優勝。2位にはトヨタGRヤリス・ラリー2の勝田範彦/木村裕介、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入っている。

開幕戦三河湾ラリーから1カ月半のインターバルを経て、全日本ラリーはカレンダー唯一の九州ラウンドを迎えた。サービスパークは例年どおり「ボートレースからつ」に置かれ、2日間で12SS、76.78㎞を走行する。唐津のステージは大きく回り込んだ見通しの悪いロングコーナーと、タイヤへの攻撃性が高い路面が特徴。レッキを終えたクルーは路面に生えた苔を警戒しており、イレギュラーなグリップ変化には注意が必要だ。

トップカテゴリーのJN-1クラスは、前戦に続きチャンピオンのヘイキ・コバライネンが欠場。コバライネンは、上行大動脈瘤の開胸手術を無事に終えたことを自身のSNSで報告しており、現在は回復に向けてリハビリを続けているという。今回もラリーチーム・アイセロのトヨタGRヤリス・ラリー2のステアリングは、田口勝彦が握る。また、スバルWRX S4で参戦する新井敏弘は、マシンにさらなる軽量化や足まわりの改良を施し、ターマックでの挽回を狙う。

今季からJN-2クラスに導入されたトヨタGRヤリスのワンメイクシリーズ「MORIZO Challenge Cup」には、開幕戦を走った7名に加えて、Ahead Japan Racing Teamの稲葉摩人がエントリーしている。

■レグ1
ラリー初日は「MIKAERINOTAKI(10.37km)」、「AMANOGAWA(4.95km)」、「SAYO LAKE(7.58km)」の3SSを、サービスを挟んで午前と午後でループする6SS、45.80km。ラリーはボートレースからつをスタートし、市内の唐津神社でセレモニーを実施。春らしい青空が広がるなか、多くの観客からの歓声に見送られながら、クルーたちはステージへと向かった。

オープニングのSS1で幸先良くベスタイムを刻んだのは、不調をきたしていたギヤボックスに修理を施した新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)。このステージだけで2番手の福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)を11.5秒、3番手の新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)も13.5秒まで突き放してみせる。一方、前戦優勝の勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)はエンジンのトラブルに見舞われて、ここだけで14.6秒も遅れてしまった。

この開幕ステージでは奴田原文雄/東駿吾が、スタートから1km地点の左コーナーでペースノートの遅れにより、まさかのコースオフ。マシンに大きなダメージはなかったものの、コース復帰は叶わず、早くもデイリタイアを選ぶことになった。

SS2、SS3も新井大輝が制し、圧巻の3連続ベストマーク。午前中のセクションを終えて、総合2番手の福永に対し、25.6秒ものアドバンテージを握った。新井敏弘はマシンの軽量化が功を奏し、R5/ラリー2勢に割って入る27.8秒差の3番手。エンジンにトラブルを抱えたまま走り続けた勝田はペースを上げることができず、41.2秒差の4番手に沈む。その後方、42.0秒差の5番手に鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)、42.2秒差の6番手に田口勝彦/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)が僅差で続く。

サービスを挟んだ午後のセクション。サービスでエンジンを修復した勝田が、SS4で新井大輝に3.8秒差の一番時計をマーク。このステージは13.5秒差の5番手に沈んだ新井敏弘を捉えて、総合3番手にポジションアップを果たした。SS5は0.3秒差ながらも新井大輝が勝田を上まわり、この日4度目のベスト。セカンドベストの勝田が福永をパスし、2番手に順位を上げた。

この日の最後を締めくくるSS6も新井大輝が勝田に2.5秒差で獲り、終わってみれば6SS中5SSを制する強さを発揮。総合2番手の勝田に40.2秒差をつけて初日をトップで折り返した。48.1秒差の総合3番手に福永、57.3秒差の総合4番手に新井敏弘、59.8秒差の総合5番手に田口、1分36秒1差の総合6番手に眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)。午前中、5番手につけていた鎌田はSS4でスピンを喫してタイムロス、1分53秒9差のクラス7番手にポジションを落としている。

抜群の安定感を披露した新井大輝は「午後は燃料タンクとプロペラシャフトが干渉する音が聞こえていたので、それをケアしながら走りました。その時点で30秒差があったので、ブーストも落としましたし、クルマを消耗させるタイミングではないと考えました。この状態で勝田選手といいペースで戦えていることは、ポジティブに考えています。明日は40秒のアドバンテージがありますし、普段テストができないので、2週間後の久万高原も視野に入れた位置づけで走りたいです」と、振り返った。

エンジントラブルによる午前中の遅れが響いた勝田は、「午前中はストレスが溜まりましたが、午後はエンジンも直してもらって気持ち良く走ることができました。SS6ではちょっと失敗しましたけど(笑)。午後の1本目でベストを獲りましたが、続く2本は大輝選手が速かったですね。40秒差はもうどうしようもないので、明日は2番手を守ってフィニッシュしたいです」と、2番手堅守を宣言した。

JN-2クラス初日首位の三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)/ Jun Uruno

JN-2クラスにおいて、JN-1クラスに割って入るスピードを見せたのは、前戦三河湾で厳しい戦いを強いられた三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)。三枝はSS3まで連続ベストを刻み、SS4でベストをマークした徳尾慶太郎/枝光展義(トヨタGRヤリス)に21.7秒差をつけて午前を終えた。3番手にMORIZO Challenge Cup(MCC)の山田啓介/藤井俊樹(GRヤリス)。4番手につけたKANTA/保井隆宏(MCC:GRヤリス)は、SS1では自身初めてMCC勢トップタイムを叩き出している。

SS5は前半のセクションでペースが上がらずクラス6番手まで順位を落としていた大竹直生/藤田めぐみ(MCC:GRヤリス)が、今回初のベストタイムを記録。このステージでは2番手につけていた徳尾がストップ。2番手に山田、3番手にKANTA、4番手に石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)、5番手に大竹と、それぞれ順位を上げた。SS6は三枝がこの日4度目のベストタイムをマークし、2番手の山田に43.1秒の大差をつけて初日を終えている。

「SS4とSS5は抑えたわけではないんですが、フィーリングが合わなくて1ループ目よりタイムダウンしてしまいました。それでも、余裕をもって明日に挑めるタイム差は得られました。最終日は危険なSSもあるので、しっかりノートをチェックして順位を守って戻ってきたいです」と、三枝。クラス2番手、MCCトップで初日を折り返した山田は「午前中はフロントタイヤにかなり厳しい走らせ方をしていました。もう少しリヤを使った走りがしたかったので、空気圧のバランスを変えてみたらすごくいいフィーリングになりました。明日は大きく変えずに、このまま行こうと思います」と、自身のドライブを冷静に分析する。

JN-3クラス初日首位の長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86) / Takuji Hasegawa

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、SS1で長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)がベストタイムをマークし、首位に立つ。この日2度のベストタイムを刻んだ長﨑は、2番手につける開幕戦のウイナー、山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)に3.4秒差をつけて初日を首位で終えた。山本はSS4で一度首位を奪ったものの、最終SSで再び長﨑にポジションを獲り返されている。SS2でベストを記録した上原淳/漆戸あゆみ(トヨタGR86)が、10.9秒差の3番手。優勝候補のひとりに挙げられていたベテランの曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)は、SS1の鋭角コーナーで痛恨のドライビングミスを喫し、10秒以上のタイムロス。優勝争いから33.3秒離れた4番手と出遅れている。

僅差ながらも昨年王者の山本を上まわった長﨑は「接戦になっていますね。SS4でのミスが、このタイム差に表れています。折り返しで曲がれなくて、リバースを入れました。3秒くらいのロスがなければ、もう少しリードを得られたんですが……。ただ、中間サービスでセットアップを変えたらフィーリングが良かったので、このまま行きます」と、コメント。一度は首位を奪いながらも長﨑の先行を許した山本は「1ループ目からセットを変えて良くなったんですが、なかなか差が詰まらない感じです。クルマの調子が良くなったし、ドライバーの方でもう少し頑張るしかないですね」と、最終日の挽回を誓う。

JN-4クラス初日首位の高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ) / Jun Uruno

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラス。前戦三河湾で復活勝利を果たした高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS1で総合12番手に入る好タイムでベストタイムから発進。このステージでは、黒原康仁/松葉謙介(スズキ・スイフトスポーツ)も総合13番手タイムで続いた。高橋はSS2も制してラリーをリードすると、この日の最後を締めくくるSS6でもベストタイムを刻み、2番手の西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)に9.4秒差をつけて初日を終えた。黒原はSS4でベストタイムをマークし、16.0秒差の3番手。SS3でベストの前田宜重/勝瀬知冬(スズキ・スイフトスポーツ)が、34.9秒差の4番手につけている。

前戦三河湾に続き抜群のスタートダッシュを決めた高橋は、「復帰以来、好調をキープできているのは、ラリーに出ていない間もしっかり走っていたからだと思います。ただ、誤算はタイヤの仕様が変わっていたこと。それもあって、自分の従来のスタイルとは違う走らせ方をしないと、美味しい部分を使えないですよ」と、自身の状況を分析した。一方、今回も高橋の先行を許してしまった西川は「午前中に比べれば、だいぶ良くなったんですが、少しずつ離されている感じですね。僕らは皆さんよりも150kg以上(体重が)重いので、上りメインのコースであることを考えれば最小限の被害で抑えたと言えるかもしれません(笑)。明日の下りでは、巻き返せるはずです」と、下りメインの最終日に逆転を狙う。

JN-5クラス初日首位の河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ) / Jun Uruno

JN-5クラスは、総合16番手に当たる好タイムでSS1を制した河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)が、この日は計3本のステージウインをマーク。前年チャンピオンの松倉拓郎/山田真記子(トヨタ・ヤリス)に11.8秒差をつけて初日首位に立った。優勝候補の大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)は、SS2でベストタイムを記録したものの、その後は河本と松倉のペースについていくことができず、トップの河本から24.3秒、選手権を争う松倉にも12.5秒も引き離されてしまった。

松倉と大倉を上まわるペースを披露した河本は「このラリーに向けて色々と変えた箇所が、うまくハマってくれました。それほど無理せずに良いタイムが出せています」と、冷静にコメント。河本の先行を許した松倉は「結果的に置きに行ったことがアダになりました。河本選手にガッツリといかれてしまいましたね。大倉選手とはいい勝負をしているんですが、河本選手が予想以上に良かったです」と、河本のスピードに驚きを隠さない。一方、大倉は「耐える、苦しい展開でした。セッティングを変えて良くなっているんですが、負けてしまうところは負けてしまうんですよね」と、我慢の展開だ。

JN-6クラス初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア) / Takuji Hasegawa

JN-6クラスは、開幕戦を制した天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、赤旗によりノーショナルタイムとなったSS5以外の全SSでベストタイムをマークし、今回も首位を独走。初日だけで2番手の清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)に50.5秒の大差をつけてみせた。3番手には、地元九州のイベントに参戦し続ける山北研二/塩濱浩之(トヨタ・アクア)。5.3秒と僅差の4番手に同じく九州のベテラン、中西昌人/山村浩三(ホンダ・フィット)が続く。

JN-6では敵なしの天野だが、「ハイブリッドのアクアはバッテリーがなくなると遅くなってしまうので、バッテリーの節約をテーマに走りました。色々な走り方を試しながら、午前と午後でタイムを比べて検証しているところです。ハイブリッドをいかに速く走らせられるか、それがテーマですね」と、さらに上を目指して試行錯誤を続ける。SS3では天野のベストタイムに1.1秒差にまで迫った清水だが、「今回、今までとは違ったハイブリッドの走りに取り組んでいます。回生とステアリングでブレーキをかけることで、よりバッテリーを使うことができるようになっています。天野選手の背中が近づきつつありますが、やっぱり一発ドカンとやられてしまいますね」と、打倒天野はまだ遠いようだ。

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